【曲名】The Gate Of Rondral 【作編曲】フルヤマ 【使用機材】Fantom-XR(SRX-04,SRX-06装着)、MU500 ----------------------------------------------------------------- 【ロンドラルの門】 ある年老いた、しかし威厳のある男が私に話しかけてきたんだ。 私が町の酒場で酔ってうなだれていたときさ。 忘れもしない、あの夜。 仕事が上手くいかず、失敗ばかりで、恋人にも逃げられそうで、 全てを投げ出そうとしていたんだ。 そんな時、彼は隣の席に座り話しかけてきたんだ…。 =========================================================================== わしが知っている伝説を教えてやろう。 なあに、ただの話好きの老人の話だ、聞き流してくれ。 ここから遥か東のほうにさ、 一つの巨大な門があったらしいのさ。 それはそれは巨大な門でね。 門を通り抜ければ、なんとそこには理想郷があるという伝説の門さ。 何千年も前にある若い冒険家がその門にたどり着いたとき、彼はその門を通れなかった。 扉が開かないんだ、何百回と押してもね。 扉はきしむ音すら立てないんだ。 彼は次第に諦めはじめ、一ヵ月後に門を後にした。 なぜかって、彼は完全に無理だと思ったからさ。 無理もない、なにしろ一ヶ月も粘ったんだ。 だがね、その門はただの門じゃない。 どんな門かって?それは後でわかるさ。 その冒険家の自伝を読んだある別の冒険家が、数十年後にその門に到達したんだ。 彼は若かったし、特に力が強いわけでもなく、一つの呪文も知らぬ普通の青年。 だが、前者と決定的に違うところがあった。 それも、君はすぐに気づくことだろう。 彼も、毎日毎日、来る日も来る日も扉を押し続けた。 もちろん、門は音も立てずにたたずむばかり。 彼は一年たっても諦めきれず、呪文の勉強をした。 鍵を開ける呪文はもちろん、爆発の呪文や嵐を呼ぶ呪文、雷を呼ぶ呪文… だがしかし、どんな呪文を使っても扉は開こうとしない。 二十年たって、彼はどんな魔術師より呪文を知り尽くした。 ついでに覚えた呪文で、故郷に残してきた母の病を治してやったりした。 それでも扉は開かなかった。 彼は、機械を使った方法で扉を開けようと考えた。 彼はまた本を読みあさり、研究を重ねていろんな機械を発明した。 でもやっぱり無理さ。 それから三十年たって、彼は数々の発明で名声を得たが、扉は開かなかった。 山のような富と名声は手に入れたがね。 彼はそれでも諦めなかった。 彼はひょっとして薬なら、と思い、またまた研究を始めた。 彼はたくさんの薬を作って、門の隙間に塗ってみた。 そのついでにできた薬で、多くの病人を助けたことも言っておこうか。 薬を四十年塗り続けても、やっぱり扉は開かなかった。 病を治したたくさんの人から感謝はされたがね。 彼は、来る日も来る日も、何万回も、何十万回も扉を押し続けた。 そんなある満天の星空の夜の日さ、 彼が寝ようとすると、なんと、触れてもいない扉が開き始めたのさ。 眩いばかりの光を放ちながらね。 その夜は、最初に門を押した日から実に丁度百年目。 わかるかい? 彼が、前者と決定的に違うところが。 そう、彼は諦めなかった。 必ず開いてみせるという信念のもと、努力を重ねたんだ。 そして、この門こそ、伝説の門。 諦めず、希望をなくさぬものにだけ心を許す、生けるロンドラルの門だ。 希望こそこの扉を開ける、「不可視の鍵」だったというわけさ。 たった一人、百年もの間扉を押し続けた彼が、その向こうにたどり着いた。 わしが言いたいのは、そういうことさ。 諦めないことだね。 そう、諦めないことだ。 あんたの場合は百年も掛ける必要はないはずさ。 もう一押しで、門は開ける、 そう信じて頑張ることだ。 扉の向こうがどうなっていたかは、わからないさ。 ただ、わしは思うんだよ。 彼は全てを手に入れたのだと。 さて、聴いてくれたお礼だ、今夜はわしのおごりとしようじゃないか。 ===================================================================================== その老人は、私が用を足して帰ってくると、そこには既にいなかった。 店の主人に聞いたさ、ここにいた老人はどこへ、とね。 すると主人は言った。 「何を言う、あんたはそこでしばらく一人で寝ていたじゃないか。  それに、そろそろ店を閉めるよ、出て行ってくれないかね。」 と。 私は、とても夢だったとは信じられなかった。 私が、勘定を払おうとすると店主はまた笑って言った。 「あんたは何も飲んじゃいないよ、寝ぼけてるのかい?」 と。 店を出ると、朝日が山の向こうから差し込んできた。 まるであの朝日は、私の胸に湧き上がる希望、そのものだった。 ふだん見慣れてるはずの朝日が、なぜかあの日はとても美しく見えた。 私は、まだ諦めまい、とその朝日に誓うことができたんだ。 その老人のおかげでね。 その後の私と言えば、このとおりさ。 愛する家族と共に、食卓を囲んでいる。 孫も三人。 こんな山奥だが、静かにのんびり暮らしているよ。 あのときの老人より年をとってしまったが、私はとても幸せさ。 そろそろ夕食の時間のようだね。 さて、聴いてくれたお礼だ、今夜はわしのおごりとしようじゃないか…